抜去インプラントの不具合要因分析

1.研究の対象

この研究は、インプラント抜去を受けられる患者さんのうち、以下の条件を満たす方を対象としています。なお、担当医師の判断によっては参加できないこともあります。

主な参加条件 

  • 年齢が20歳以上の方
  • 人工股関節の抜去術を予定されている方
  • 患者さんご本人から同意が得られた方
2.研究目的・方法

現在、人工関節や骨折治療用体内埋め込み機械(整形外科インプラント)は、関節の病気や骨折の治療に欠かせない重要なものであり、日々よりよいものを患者様に提供できるように大学や企業などで研究されています。既に体内に入れられたインプラントがどのようになっているかを調べるのは、整形外科インプラントの進歩に大きく貢献できます。整形外科インプラントは体内に埋め込まれても毒性がなく、簡単に壊れたりしないように安全基準を満たすことが証明されて薬事承認され、販売使用されています。しかしながら、インプラント材料の磨耗や破損による再手術は、必ずしも時代とともに減少しているとは言えず、予想外に短期に不具合を生じる例も散見されます。また長期間機能し続けた後に耐用年数を過ぎて不具合のために交換する必要がある場合もあります。また、これらの不具合の中には、更に改良することで長持ちする可能性のあるものも存在するとも考えられます。インプラントの改良や行政的な安全基準策定にとって、体内で役目を終了したインプラントを取り出して、その分析をすることは貴重なデータとなりますが、現時点では日本で不具合分析登録システムがありません。

方法は、この研究に関して、ご理解、ご同意を頂けた場合、手術時に摘出したインプラントと関節液を種々の方法で分析します。また、機械的な磨耗や強度低下が体格(身長、体重など)や体内に埋め込まれていた期間や関節液成分と関連性がないかを、X線写真、カルテデータなどの資料とともに解析します。摘出したインプラント、関節液とX線写真などの資料は共同研究施設である国立医薬品食品衛生研究所にも匿名化した上で送付され、詳細な分析を行います。本来、抜去されたインプラントは明らかな感染症の場合でなくても感染源として廃棄されるもので、また、関節液は通常手術時に失われるもので、これを分析するだけなので新たに調査に対して身体的負担はありません。

この研究は、2025年3月末まで行われます。また、100人の患者さんに参加していただく予定です。

3.研究に用いる試料・情報の種類

今回の試験について、ご承諾いただいた場合、患者さんの結果をデータとして利用させて頂きます。その際に用いるデータは、手術時に摘出したインプラント、関節液、X線写真、カルテデータなどの資料とともに解析します。データを取りまとめるために関係者が見ることはありますが、その場合もプライバシーは守られます。

4.研究組織

この研究は大阪大学大学院医学研究科運動器医工学治療学が主体となり実施します。全国の約3施設が参加予定です。

【研究代表者】(研究全体を統括する研究者)
大阪大学大学院医学研究科運動器医工学治療学 菅野伸彦
【研究事務局】(事務的な業務を行う施設)
大阪大学大学院医学研究科運動器医工学治療学
【データセンター】大阪大学大学院医学研究科運動器医工学治療学
【検体の測定】国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部
【参加予定施設】協和会病院 人工関節センター長 中村宣雄
山口大学大学院医学系研究科 整形外科学 坂井孝司 

5.お問い合わせ先

この研究について、わからないこと、相談したいことがありましたら、担当医師におたずねいただくか、以下までご連絡ください。

〒565-0871
大阪府吹田市山田丘2-2
大阪大学大学院医学研究科運動器医工学治療学
研究責任者:菅野伸彦
担当医師:菅野伸彦、高尾正樹、安藤渉、濱田英敏
連絡先:06-6879-3271